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「ソフトウェア品質のホンネ」連載中!

SQiPポータルサイトでは、SQiP委員のソフトウェア品質へのその想いをコラム的に綴る
「ソフトウェア品質のホンネ」のコーナーを好評連載中です。
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システム思考とシステム工学

日本光電工業㈱ 大野 晋

 さて、今回はシステムを捉える視点:システム思考とシステムを構築するための体系であるシステム工学について説明します。 
 面白いことに、日本では本当に重要な本や役に立つ本が売れない、もしくはすぐに廃版になってしまう傾向があるようです。今回ご紹介する2冊の本もそうしたものの一例ですね。 
 
 ジェラルド・M・ワインバーグと聞くと多くの私のようなオールド・ソフト技術者は無性に読み漁った経験を持つのではないでしょうか?
 すでに廃版になった「技術レビューハンドブック(原版は入手可能だったはずですが)」のような本もありますが、現役の著作の中では「一般システム思考入門」(紀伊国屋書店)は取り付きにくい印象を持つ本です。おそらく、一連の著作を読む中で途中で挫折した経験を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
 一方で、東京駅前の書店最上階にある松丸本舗(本のセレクトショップ)のコンセプトとなった松岡正剛氏のエッセイ「千夜千冊」の中では、自らの思想に影響を与えた一冊に選ばれていたりもします。(1230夜) 
 
 システム思考とは、現代の科学(自然科学のみならず社会科学も)の研究の基本となっている考え方で、ある事象を見る際に、その事象全てをひとつのものとして捉えるのではなく、それが持つ複数の特徴に着目して、それぞれの構造を明らかにし、それを積み重ねることによって全体の構造を理解しようとする方法論です。いわゆる物理学の法則も、経済学の理論も、通信規格であるOSIの構造も、数学の体系すらもこの見方で構築されています。
 簡単な例を挙げると、たとえば、図のような図形の集合があった場合、全体を見るとばらばらで訳がわからなくなってしまいますが、「色」という特徴と「形」という特徴に着目すると、それぞれ2種類のものから構成されていることがわかります。こうした構造を理解することで、全体の理解が容易になるわけです。これが一般システム思考の基本的な考え方で、実はG.M.ワインバーグの著作全体を貫く思想であったりもします。
 なぜ、ワインバーグ氏がこの考え方を繰り返し提示したのかといえば、この考え方自体がシステムを構築する際の仕様の考え方と全体の構築方法を理解する道だからなのだと考えます。実はシステムの構築は、長い間、先人たちが解析してきた数々のパラダイムを用いて、私たちが新しいものを構築する作業に過ぎないのです。 
無形の状態色に着目

色に着目

形に着目

2種類でできていた

 
 システムを構築する場合、前の例のごちゃごちゃのまま、全体を理解するのは難しいですが、「色」、「形」というように構成する条件(パラダイム)に気づくことによって、より容易に全体の構造を説明することができるようになるのです。
 逆に、この構造を理解してしまえば、全体は各階層モデルの組み合わせで表現できるようになるはずです。

ただし、複雑なシステムを構築する場合には、問題を解析し再構成するプロセスが非常に難しくなります。(これがシステムに関する研究が進んだ理由ではあるのですが)
 そこで、システムを構築するための方法論が必要になりました。これが、システム工学です。
 システム工学に関する全体観をまとめた良書がアンドリュー・P・セージの「システムズエンジニアリング」(日刊工業新聞社)です。もともと、カーネギーメロン大学の情報科学の教科書でもあり、原著は今も版を重ねていますが、日本語版は1997年に出版されましたが現在は一般的な良書の例に漏れず廃版になっています。この本はNASAのシステム工学のハンドブックの下敷きにもなっています。本来はシステムエンジニア(SE)を育てるための教科書なのですが、全てはおろか、そういう工学の体系があることすら知っているSEはほとんどいないものと思います。また、日本で書かれた類似著作はほとんど情報システムに対する構造について書かれたものが多く、システム工学の構造をシステムとしてきちんと提示している書籍は日本では本書しかないはずです。(が、もう絶版です) 

セージは著作の中で、システム工学のシステムを次の階層で説明しています。

第1章 システム工学入門
  第2章 システム工学プロセスとライフサイクル
  第3章 システムマネージメント
  第4章 運用と業務レベルのシステム品質保証
  第5章 戦略的な品質保証と管理
  第6章 情報要求、リスクマネージメント、システム工学手法
  第7章 決定評価
  第8章 ミクロ経済システムとコスト、運用効果分析
  第9章 認知人間工学

 個々の内容については、非常に詳細で巨大な本のため、目次の紹介にとどめますが、特筆すべきは、戦略的な品質保証と管理の項で、TQMについてその構造と手段、目的について詳細に記述している点です。
 この本が書かれたのが1992年、日本で出版されたのが1997年ですが、時同じくして日本では、TQM活動を多くの組織で廃止し、現在まで延々と続く「失われた20年」という時代に突入していくのは皮肉のようにも思えます。
 総ページ573ページの巨大な、しかも当時は12000円もする高価な「入門書」でしたが、もし、読む機会があるのならぜひ目を通してみてください。本来、システム(全ての人工物、特に複雑なもの)を構築する仕事をするのであれば、必読の知識体系だと考えます。

さて、今回はシステム思考とシステム工学について、参考書の紹介で簡単に説明しました。
 次回は、パラダイムについて説明する予定です。

 

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