第2回 その場でできる心身評価~1秒でできる体力評価①~
清泉クリニック整形外科スポーツ医学センター 施設長
脇元 幸一
パソコンに向かってデスクワークしている皆さん、肩こり・腰痛・頭痛などに悩まされていませんか?
さて第2回となる今回は「体力」についてお話します。体力とは大きく2つに分けることができます。それは、「筋力」と「柔軟性」です。この2つを同時に持ちえる方が、体力がある、といっても過言ではありません。そのなかで、今回は「簡単にできる筋力検査」についてお話しますので、自分自身の筋力を把握してみてください。
あなたの筋力はどれぐらいか?
皆さんがやらなければ、と気付いていることなのに、なかなか実行できないのが運動習慣ですね。この地球上にて運動を行う中で絶対に無視できないのが重力です。地球上の人は動作を行うとき、必ず重力に抵抗できなければ動くことができません。この重力にどれだけ勝てるかが筋力なのです。今回はその場ですぐできる筋力テストをお教えします。
それは、下の図に示すように『何センチの高さから片脚で立てるか』をやってみるだけで筋力が点数化できるのです!! この筋力は『体重支持指数』といって医学的にも根拠ある筋力指数です。
では、普通のパイプ椅子を用意してみてください。パイプ椅子の高さは約40cmです。
左のように椅子に座り、片脚を宙に浮かし膝を伸ばした状態で座ります。次に反対の床についている足で反動なくゆっくり立ち上がってみましょう。このとき、痛みなどがある場合は無理のないようにしてください。
この約40cmの高さから問題なく立てた方は、以下のように台や椅子を低くして何cmから立てるかを試してみてください。(週刊誌などを重ねて簡単な台にしてください)
さて結果は…?
0cm(床)から立てた人
130点!これが出来た方は筋力が十分です。どんなことをやっても筋肉は悲鳴をあげない人です。また少々のストレスでは体に変調をきたしません。
15cmから立てた人
筋力は問題ないと言える人です。
30cmから立てた人
日常生活はほぼ大丈夫でしょう。しかし、ちょっとした油断、生活ストレスなどが蓄積すると肩こり・腰痛・頭痛などの症状が出現する恐れがあります。
40cmから立つのが限界な人
この高さから立てた人は体力の低下がみられます。
このような方はその場の対処療法(マッサージ、電気、薬)でも症状がなかなか改善できない体力となります。
40cmから立てなかった人
この高さから立てなかった人は、黄色信号から赤信号です。日常生活をしているだけでも体にストレスがかかる状態です。つまり、生きていることがストレスとなります。
この状態の方はいきなり運動を始めても筋力が上昇するどころか、症状が悪化する可能性もありますので、プール歩行から運動を開始することが大切です。
私は若いからといっても体力が必ずしも伴うものではありません。また、今は症状がなくても今後症状が出現する予備軍かもしれません。まずは己を知ることからはじめましょう。ぜひお試しください!
ここでもう1つ筋力について情報を示します。大切なのは、筋力とはただ動くことだけではないのです。実は…、整形外科的疾患である肩こり・腰痛・膝痛などは筋力が無くなっていることが原因で生じるのです。
筋力が落ちている方はレントゲンでも特徴的なものがみられます。
写真を見てすぐわかるように、正常な背骨はS字状になっていますが、筋力が低下している背骨はまっすぐな背骨になってしまっています。筋力がある人は筋肉で体を支えられるので背骨をS字状に保つことができますが、筋力が低下している人は筋肉で自分の体を支えることができないので背骨の骨同士で体を支えるようになってしまい、結果としてまっすぐな背骨になって体を支えようとしてしまうのです。つまり、背骨のS字がなくなってきている人は筋力が落ちていると考えられるのです。
このレントゲン像はどこかでみたことがありませんか?そうです!第1回で伝えた頭の疲れ・内臓の疲れと同様なのです。このような様々なことが背骨のS字を消失させる原因となるのです。
第1回で頭と内臓のストレス検査、第2回で体力のうち「筋力検査」についてお伝えしてきました。次回は「その場でできる心身評価~1秒でできる体力評価②~」で、もう1つの体力の要素、「柔軟性」について紹介いたしますのでお楽しみに!
(文責:清泉クリニック整形外科 スポーツ医学センター 理学診療部 嵩下敏文)