第3回 その場でできる心身評価~1秒でできる体力評価②~
<監修>
清泉クリニック整形外科 スポーツ医学センター
施設長 脇元 幸一
パソコンに向かってデスクワークしている皆さん、肩こり・腰痛・頭痛などに悩まされていませんか?
さて第3回となる今回も、「体力」についてお話します。前回もお話しましたが、体力とは大きく分けて2つに分ける事ができます。それは、「筋力」と「柔軟性」です。この2つを同時に持っている方が『体力がある』といっても過言ではありません。前回は「簡単にできる筋力検査」についてお伝えしましたが、今回は「簡単にできる柔軟性評価」についてお話します。自分自身の柔軟性を把握してみてください。
あなたの柔軟性はどれぐらいか?
「体が硬いですね」との問いかけに、「昔から硬いんです」という言葉を私は臨床の場でよく耳にします。この言葉は諦めなのか、いいわけなのかはわかりませんが、柔らかくならないのは自分のせいではなく、昔からこうなので変わりませんという言葉にしか聞こえません。
そうではないのです!! 柔らかくなろうと努力すれば可能なのに努力しないだけなのです。例えは、新体操などの高いレベルで柔軟性を必要とするスポーツをやっている選手が努力なく柔らかくなったと思いますか?そんなことはありません。努力してあの柔らかい体を手に入れている選手がほとんどなのです!柔軟性はバネの作用をします。つまり体にかかる衝撃を吸収する作用があるのです。車のサスペンションを思い出してみてください。サスペンションのいい車は乗り心地が柔らかいですが、サスペンションの悪い車は乗り心地が硬いのはすぐ想像がつきます。つまり、柔軟性のない体はサスペンションの悪い車と同じなのです。
では、あなたの柔軟性がどの程度なのか判断する方法を3つご案内いたします。
①もも裏柔軟性
写真左のようにその場で立った状態から前屈して指先が地面につくかどうかをみます。写真右のように地面に着く事が出来た人は合格。これで、もも裏の柔軟性をみることができます。
②もも前柔軟性
写真左のように椅子に座った状態で足首を持ちます。そのまま体と足が一直線になることが出来るかどうかをみます。写真右のように体と足が一直線になることができた人は合格。これで、もも前の柔軟性をみることができます。
③背中柔軟性
写真左のように片足をなげだした状態になります。そのまま頭が膝につくかどうかをみます。写真右のように頭が膝につくことが出来た人は合格。背中の柔軟性をみることができます。
3つとも合格だった方:柔軟性は優秀です。もしかしてタコ人間!?
2つ合格だった方:比較的体は柔らかい人ですね。まあ、普通というところですか。
1つ合格だった方:これは黄色信号ですね。いつ赤信号になってもおかしくありません。
すべて不合格だった方:危険!! サスペンションのない車で走っているのと同じ状態です。
前回の「筋力」、今回の「柔軟性」、この2つがなぜ体力を表すのかを図で示します。
筋力高く柔軟性高いタイプ
上図が筋力もあり、柔軟性もある状態です。これが「体力が高い」となります。この状態が理想的な状態であることを表します。
左:筋力高く、柔軟性低いタイプ 右:筋力低く、柔軟性高いタイプ
逆に左の図のように筋力が高くても柔軟性が低い場合は「体力が低い」となります。また、右図のように柔軟性が高くても筋力が低い場合も「体力が低い」となります。
柔軟性の落ちた体はレントゲンでも特徴的なものがみられます。
正常なS字 S字消失
写真をみてわかるように、正常な背骨はS字状になっていますが、柔軟性が低下している背骨はまっすぐな背骨になってしまっています。柔軟性がある人はバネのように衝撃を吸収することができてS字を保つ事ができますが、柔軟性が低下してしまっている人は衝撃吸収できないので背骨同士で支えるようになってしまい、結果としてまっすぐな背骨になって体を支えようとしてしまうのです。つまり、背骨のS字が無くなってきている人は柔軟性が落ちてきているのです。
このレントゲン像はどこかでみたことがありませんか? そうです! 第1回で伝えた頭の疲れ・内臓の疲れ、第2回で伝えた筋力の低下と同様なのです。このように様々なことが背景となって背骨のS字を消失させる原因となるのです。
第1回で頭と内臓のストレス検査、第2回で体力の中の「筋力検査」、第3回で体力の中の「柔軟性」についてお伝えしてきました。第4回では「その場でできる心身評価~あなたの体のサビ度チェック~」について紹介いたしますのでお楽しみに!!
(文責:清泉クリニック整形外科 スポーツ医学センター 理学診療部 嵩下敏文)