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2.人材育成

TEF札幌テスト勉強会のご紹介

TEF札幌テスト勉強会

安達 賢二、上田 和樹、大野 隆行、小楠 聡美、
高木 進也、中岫   信、中澤 悠美、野澤 朋子、
藤田 将志、南川 雄志


Quality Oneをご覧のみなさんへ、北海道:札幌で行っている小さな活動「テスト勉強会」についてご紹介したいと思います。

■勉強会の概要

 今回ご紹介する「TEF(※1)札幌テスト勉強会」では、主に平日の定時以降に札幌地域の有志が集まり、ソフトウェアテスト関連のテーマで勉強会に取り組んでいます。
インターネット上の無償提供機能の活用や、活動に理解のある企業様(メンバーの勤務先企業/いつもありがとうございます)の会議室提供等により、参加費・会費は無料(実費発生時は割り勘ですが、その実績はありません)で、メンバーによる手弁当で運営しています。
現在登録メンバーは12名で、毎回の勉強会には平均7~8名の参加者があります。

※1:TEF:Testing Engineer's Forum ソフトウェアテスト技術者交流会
http://www.swtest.jp/wiki/index.php?swtest.jp%2Fwiki%2Fforum

■発足とこれまでの経緯

 勉強会の発足は2006年。
この年の10月に、札幌ではじめて開催された「ソフトウェアテストシンポジウム2006札幌(JaSST'06札幌)」で取り組みを呼びかけたのがきっかけです。

http://www.jasst.jp/archives/jasst06s.html
JSTQB認定テスト技術者資格チャレンジプロジェクトのご紹介

JaSST'06札幌は、札幌周辺の情報技術関連の情報交換、技術向上を目指して任意で活動していた"北海道情報技術フォーラム:HIT(http://sw-quality.com/hit_forum.aspx)"のコアメンバーが、組織の垣根を超えたIT技術者の交流・情報交換を目的として地元に誘致し、東京・関西など他地域JaSST実行委員会メンバーの手厚い支援を受けて準備・開催したシンポジウムでした。

しかし、その準備中に「年に一度のイベントだけではなく、普段から継続的に取り組んで自分達のスキルやノウハウを高められないか」とメンバーで検討した結果、当時国内運営が開始されたばかりの"JSTQB認定テスト技術者資格(http://www.jstqb.jp/)"へのチャレンジを企画しました。

結局この募集に集まったメンバーは8名。試験前までに手探りで7回の勉強会を実施し、翌年(2007年)3月に札幌で初めて実施されたこの試験を受験したメンバーが全員合格。
その後もエレベータの動作に対するテスト演習問題に取り組むなど数回勉強会を実施して、当初目的を達成したプロジェクトが終了しました。
結果的には、この対応が現在の札幌テスト勉強会の第一歩になったと言えます。

-そして中断・・・
勉強会が終わり解散してしまうと、次のテーマ設定や勉強会立ち上げ(メンバー募集や調整など)がうまくいかなくなりました。
特に重要なカギを握る"メンバー集め"には、その候補者への連絡手段や呼びかけの機会が必要になりますが、札幌には広くそのことを知らせるチャネルや連絡ルートは存在していません。
また、当時は運営ノウハウも少ない状態でしたので、誰もが参加を希望するようなテーマ設定や具体的な内容検討なども簡単なことではありませんでした。
結局誰からも声が上がらず、普段の業務対応などで新たなテーマの勉強会を立ち上げるためのパワーも割けず、気がつくとずるずる約一年が経過していました。

-ようやく再開
2008年に入り、お仕事で来札された電気通信大学:西康晴氏(TEFお世話係)と(株)豆蔵:シニアコンサルタント大西建児氏のご厚意で平日定時以降に勉強会を開催することができました。
やはり著名な有識者の力は偉大です。あっという間に沢山の参加者が集まり、テストについてのノウハウを提供頂きながら参加者全員で熱い数時間を過ごしました。
そして集まってくれたみなさんに以降の勉強会運営をアナウンスできたことから、勉強会を再開することが出来たわけです。
お二人にこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

■現状の実施形式

札幌テスト勉強会では、主に3つの実施形式があります。

一つ目:"テストの基礎を学ぶもの"
テスト関連書籍やJSTQBシラバス(http://www.jstqb.jp/syllabus.html)などの内容をきっかけにして、ソフトウェアテストの基本的な用語や全体像、個々の要素などを把握し、普段の業務・実務作業の意味や内容、抱えている課題と対応方法などを身につけることを目指しています。

実施時期 実施内容 参加数 備考
2006.10~2007.3 JSTQB認定テスト技術者Foundation Level資格チャレンジ
→JSTQB認定テスト技術者資格チャレンジプロジェクトのご紹介
http://www.jasst.jp/archives/jasst06s.html
8名 のべ7回
2008.7~8 テストの基礎を学ぼう-(1) 8名 のべ4回
2009.1 テストの基礎を学ぼう-(2) 3名 のべ4回

これまでにこの形式で3サイクル実施し、参加者のほぼ全員がJSTQBテスト技術者Foundation Levelに合格しています。今後は合格者が教える立場となり、地域のテストエンジニアの裾野を拡げていきます。

二つ目:"ゲストの方に持ちネタを披露頂くもの"
普段地域では聞くことができないテストのノウハウをゲストの方に提供いただくものです。
地域としてのノウハウ獲得のためにとても大事な、そしてありがたい機会となります。

実施時期 実施内容 参加数
2008.5.28 ワークショップ:「テスト戦略を立ててテスト設計をしてみよう」
ゲスト:電気通信大学 西 康晴氏
22名
2008.6.16 一緒に考えよう:「テスト計画策定の要点」
ゲスト:(株)豆蔵-シニアコンサルタント 大西 建児氏
12名

三つ目:"企画もの"
運営担当者やメンバー、あるいはお世話係の発案で実践形式にて取り組むものです。

実施時期 実施内容 参加数 備考
2007.4~2007.6 "エレベータ動作テスト問題"に挑戦 8名 のべ3回
2008.12.1~継続対応中 "ペットボトル型加湿器仕様"でテストプロセス実践してみよう 12名 現在のべ6回

題材となる「仕様」をベースに、複数のグループで「仕様分析」→「テスト観点の導出」→「テストケースの作成」を実践し、各段階での大事なポイントや考慮事項、気がついたことなどをまとめながら進めています。
最終的にはこれらの成果を今後のJaSST札幌(http://www.jasst.jp/)等関連イベントや、他地域の勉強会等で発表し、外部からのフィードバック獲得を目指しています。

TEF札幌テスト勉強会の光景
TEF札幌テスト勉強会の光景

■運営上の工夫

 勉強会運営ではいろいろな工夫を行っていますので、主なものをご紹介します。

・知識よりも実践能力の向上を目指す場に
勉強会では、可能な限り各メンバーが自らの頭や体を総動員して取り組んだ結果(成果物)に対して議論するなどにより実践能力の向上を目指しています。

・メンバーの目線で取り組める/気づきを得られる場に
勉強会のテーマは、実務上の問題や課題を想定し"実務の/現場の目線"で企画・提供しており、毎回勉強会レポートを作成することでメンバーの気づきを促進しています。

・自らの立ち位置を把握できる場に
様々な実務経験を持つメンバーが集まり、テストプロセスや開発作業との連携情報などを意図的に含めることで、普段の実務作業の意味や位置付け、自分の立ち位置を感じてもらえるようにしています。

■参加者の声

 ここで参加メンバーの"勉強会の感想"をご紹介します。

・勉強と実践の間にいくつもハードルがあることを感じませんか?
せっかく勉強したことでも、いきなり実務に取り入れるのは難しかったり、試行錯誤をする暇もなく、結局勉強しただけになったりしていませんか?
私はこの勉強会を通じて「勉強したことの実務への活かし方」を学んでいると思っています。様々な分野のテストエンジニアが集まり、それぞれの経験を活かして勉強したことの実践方法を考えることで、自分自身や、自分の会社にない考え方やノウハウを知ることもできるので、とても楽しく参加させて頂いています。

・複数の人数で、一緒にテストケースを考えていくと、自分が考え付かなかった意見がたくさん出てきて、自分の足りないところが見えてきます。参加するたびに新しい発見があり、現在、次回テスト仕様書作成時にどのように取り入れていこうか検討中です。
また、自分の考えと他の参加者の方の意見が合うと、ちょっと自分に自信がもてます。そして、何より他の会社の実践方法などを伺え、とても参考になり、かついい刺激となっています。

・いろいろな製品、開発規模、立場でお仕事をなさっている方々が参加されていて、それぞれの考え方・意見・悩みを知ることでき、とても面白いと思っています。
普段の仕事のなかで、ともすると前例を踏襲したままの仕事をしてしまいますが、業務改善や調査・研究を行なうきっかけ、また、ソフトウェアテストや設計開発に対する「考え方」の整理の"着眼点"を与えてくれる勉強会として役立っています。

・テストの勉強を通して、テスト以外の要求や設計でどうあるべきなのかを考えさせられる事もあり、テストという1つのことを勉強しながらシステム開発全体のことも勉強しているように思います。
テスト分析-設計-作成と、メンバーと共に作業を進める中ではテストについて具体的な技術情報について勉強することもでき、書籍やPCに向かうのとは違い、わからない事をその場で質問して答えてくれる人もおり、意見交換もできる貴重な時間です。

・参加する人が各々違う仕事をして来た事もあってか、テスト勉強会を進めて行くとさまざま意見が出て来て驚きます。
そして、今まで自分が知らなかった新しい発見(気づき)があり面白いです。
この「発見」が、きっと、勉強会を通じたコミュニケーションの効果なんだと思います。勉強会で得た事を自分の物にして、今後仕事に役立てたいです。

・自分の壁を乗り越える為に、一念発起して勉強会に参加しました。
参加してみて、「テスト」に対して全員で真剣に語れる場があるのは素晴らしいと感じました。様々な立場の方々と真剣な会話をしていると、自分が知らなかった事を知るきっかけになったり、自分のやりかたが間違っていなかったんだという確信が得られたり、勇気と自信が沸いてきます。
自分の為にも、さらには微力ながらテストエンジニアの地位向上の為にも頑張りたいです。

・仕事上、日常生活では、作業に黙々と取り組む時間が多くなってしまいがちなのですが、勉強会では、グループでマインドマップを作成するなど、にぎやかに作業することが多く業務に追われる日々の中で良い刺激になっています。
勉強会の中で、様々なテスト技法の例題を解きそれぞれの答えを発表し合う場面があったのですが、参加者の実務経験に基づく様々な回答が出てきて、とても面白かったです。

■終わりに

 IT開発関連のスキルアップを考えると、IT関連従業員数や関連情報、学ぶ機会、専門組織などが少ない北海道・札幌はよい環境とは言い難いと思います。
ですから周囲の環境に頼らず、まずは自分のために、自らできることから対応していく、そして自らやると宣言してくれた方達と活動しています。
今後も同じ気持ちを持つ有志のみなさんと勉強会を継続していきますので、参加したい、やってみたいと思われる方はご連絡下さい。

ほんとうに小さな取り組みですが、地域IT技術者のそれぞれの一歩に繋がるきっかけにつながっていけばとてもうれしいです。

 連絡先:TEF-sapporo-owner@yahoogroups.jp

プロフィール(代表者)
安達 賢二(あだち けんじ)
株式会社HBAでプロセス改善の推進、管理者・技術者育成支援などを担当
NPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会 理事
ソフトウェアテストシンポジウム札幌 実行委員長 ほか
ソフトウェア品質等の関連情報を Software Quality.com にて発信している。
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