幸せな未来へのイメージにつなげる
AJS株式会社 技術企画部
諸 葉子
今年度もほぼ半分が過ぎようとしています。年度の始まりでは、会社が掲げる目標を上司から説明され、その組織の目標に基づいて、自分の目標を立てた方も多いかと思います。また、その目標とは別に、自分の目標を立てられている方も多いかもしれません。
目標、達成できそうですか?
目標に向かっての活動は、やりがいを感じるものでしたか?
部下がいる方は、メンバーはやりがいを感じて力を発揮できていましたか?
今回は、その「目標」とその「やりがい」について皆さんと考えたいと思います。
まず、目標って何でしょうか?
資格試験の合格、業績目標の達成、年収アップ、マラソン完走、毎月何冊の本を読む、部屋の掃除を終わらせる、など、自分の中で達成したい何かについて数値や状態などで表し、そこに向けて取り組んでいくもの。そんなイメージです。
このように考えると、何年もかけて達成するものから日々の活動まで、大きな目標、小さな目標、あまり意識をしないうちに、いろんな目標を持って生活しているのだと気がつくかもしれません。「目標」として掲げなくとも、何かしらどこかで小さな「目標」は、誰もが考えていそうです。
今年のゴールデンウィーク、甥っ子姪っ子と妹とで大きなショッピングモールで楽しい時間を過ごしました。その日は自分に夕方予定があり、時間が差し迫っていたため、「また会おうね」と、その場で別れました。その日は初夏に近いくらいの暑い日で、私は日傘を持参していたのですが、その日傘をその場に忘れてしまったのです。携帯電話で連絡をもらいながらも、別れた場所からすでにかなり離れてしまっており、次の予定に間に合うかぎりぎりだったため、日傘を残したまま、次の予定に向かいました。
後から聞いた話ですが、甥っ子姪っ子たちは私を追いかけて、「日傘をネネに届けるんだ!」と張り切っていたそうです。(ネネと呼ばれています)
ちなみに甥っ子姪っ子は、6歳、4歳です。この小さな「忘れ物」の出来事は、甥っ子姪っ子にとって、「日傘をネネの元に届ける」という目標となり、その目標を達成するための行動をとろうとしていたのです。
なぜ、私に日傘を届けることに張り切ったのでしょうか。
考えるに、そこには
「自分たちが届けた日傘をネネが受け取って喜んでくれる」
「ネネが喜んでくれることが嬉しい」
「大好きなネネを助けたい」
そんな「幸せな未来へのイメージ」や彼らの「価値感」があり、それが「ネネに日傘を届ける」という目標につながったのではないでしょうか。(図1)
図1 幸せな未来へのイメージにつながる目標(ネネに日傘を届ける)
目標を達成することによって、本人にとってどんな意味があるのか、何を感じるのか、どのように変わっていくのか、そこに「幸せな未来へのイメージ」があるからこそ、人はそこに向かって行動していくのではないでしょうか。
例に挙げた甥っ子姪っ子の小さな目標は、突発的な出来事ではありましたが、それを達成することは、何かしら「幸せな未来へのイメージ」がそこにあったように思えませんか?そこにつながる何かがあったからこそ、無意識にでも行動に移っていたのではないでしょうか。その目標を達成することは、「ネネを助ける」のか、「喜んでもらいたい」のか、そこにどんな意味があったのかは、本人たちに聞いてみないとわかりません。ただ、行動することに対する、何かしらの意味が甥っ子と姪っ子にあったのだと、私は感じています。
人は、「意味」や「価値感」に基づいている場合、無意識にでも行動し、「やりがい」「やる気」を感じるものなのだ、と言えそうです。
次に、「やりがい」「やる気」が生まれる理由はわかったけれど、では、継続していくには?
日々のことを振り返ると、「やりがい」「やる気」の継続は、とても大切な視点です。
私はある資格試験の合格を目指しています。昨年、見事に落ちてしまい、現在再チャレンジに向けて取り組んでいるところです。1年間で1500時間ちかくの時間をその取り組みに当ててきたため、落ちたときはかなりのショックでした。しかし、そこで振り返りを行うことで、今回皆さんにお伝えしている「幸せな未来へのイメージ」と「目標」の関係がはじめて自分の中で結びついたのです。その関係を表したものが、図2です。
(図2 幸せな未来へ向かうやりがいのサイクル)
ポジティブイノベーションセンターPPAL(諸 発表資料より)
この図は、「やりがい」「やる気」について、「①目標」「②行動」「③評価」「④満足・達成感」「⑤渇望」の5つのフレームワークを当てはめて定義してみたものです。
達成したいと考えている目標は、自分にとって「幸せな未来へのイメージ」に基づく意味をもっているものです(①目標)。目標を達成するための行動をとります(②行動)。そして、行動を継続するための大切な機能である評価を行って、成長を確認していきます(③評価)。評価の結果、成長に足りなければまた行動を繰り返し、満足いくものであれば、達成感を得られます(④満足・達成感)。やりがいの中の心地よさを感じた人は、またやりがいのサイクルに戻りたくなり、「やりがいのサイクル」戻っていきます(⑤渇望)。
この5つのフレームワークのそれぞれが「やりがい」ととても密接に関わっています。次回は、これら5つのフレームワークについて、「やりがい」につながるポイントを押さえ、「やりがい」が継続していくためには何が必要なのかを一緒に押さえていきたいと思います。