SQuBOKガイドの改訂に向けた活動について
(株)NTTデータ 技術開発本部
プロジェクトマネジメント・イノベーションセンタ
町田 欣史
はじめに
SQuBOK®ガイドの第1版が2007年11月に出版されてから約3年が経ち、この間にIT業界には様々な変化がありました。身近なところでは、iPhone 、Android携帯などのスマートフォンやiPad、Kindleなどの新たなデバイスの登場、Twitterという新たなコミュニケーション手段の流行、クラウドコンピューティングを使った新たなビジネスモデルの確立といったことがありました。このように、ITの技術は日々進歩しています。そして、それらの技術を使った製品やサービスの品質を確保するための技術や考え方も追従して変化していかなければなりません。
SQuBOK®ガイドの目的の一つには、これまで日本で培われてきたソフトウェア品質に関する暗黙知を形式知化するというものがあります。これは普遍的なものであり、技術が進化しても変わることのない品質に対する考えになります。一方で、SQuBOK®ガイドのもう一つの目的として、ソフトウェア品質に関する最新のテーマを整理、体系化することがあります。従って、SQuBOK®ガイドは、新たな技術の登場に伴って変化するソフトウェア品質に関する情報を取り入れて、不定期に更新していく予定になっています。
2008年10月にはSQuBOK®ガイドのアメンドメントをWebで公開しました。ここでは、第1版では対応できなかったパブリックコメントへの対応や、参考文献や論文の最新化を行いました。それからさらに2年が経ち、このたびSQuBOK®策定部会では、SQuBOK®ガイドのメジャーバージョンアップ(第2版)に向けて作業を開始しました。まだ改訂に向けた議論の途中段階ということもあり、確定の情報ではありませんが、検討している改訂内容の一部を紹介したいと思います。
設計領域に関する解説の追加
SQuBOK®ガイドの第1版で扱えなかった領域として、ソフトウェア開発プロセスの上流から中流にあたる、要求分析、設計、実装の部分があります。これらの作業におけるマネジメントや技法については、SQuBOK®ガイド第1版の樹形図には含めていたものの、詳しい解説はペンディングとなっていました。次版では、これらの部分についての解説を含める予定です。これにより、ソフトウェア開発プロセスの全体がカバーされることになりますので、実装を担当するプログラマの方、アーキテクチャ設計を行うソフトウェアアーキテクトの方、要求分析を担当する要求アナリストやビジネスアナリストといった、これまでSQuBOKとはあまり縁のなかった方々にも興味をもっていただけることと思います。
ただ、これらの領域はSWEBOK(ソフトウェアエンジニアリング知識体系)でも知識体系として整理されており、内容に重複が出てしまうことを懸念しています。SQuBOK®ガイドは、SWEBOKを否定や排除するものではなく、その中からソフトウェア品質に関する要素を抽出したものです。従って、SQuBOK®ガイドでは、「品質」という視点で、これらの領域におけるマネジメントや技法について解説していく予定です。
※iPhone、iPad はApple Inc.の商標です。その他本文中の製品名は各社及び商標権者の登録商標あるいは商標です。