品質保証技術者の育成
株式会社日立製作所 中田雅弘
図1は、このQAスキル向上WGの活動ロードマップです。
先に述べたように、テクニカルスキルだけでなくマインドやビジネススキルに重点をおいたものとしています。

ビジネススキルの獲得のために、またテクニカルスキルについてもより深み厚みを持たせるためには「経験」が必要ですし、失敗の経験から得られる教訓には教科書からは得がたい知見や洞察が含まれています。このような経験を共有し、擬似体験することで経験値を上げていくことが重要と考えます。
失敗事例の分析と再発防止策を報告する「落穂拾い」や品質改善事例を紹介する「テクニカルフォーラム」はそのような場となっています。
さらに自らの考えをまとめ、表現し、ステークホルダに理解してもらう実践的な訓練の場としてSQiPなど「社外発表」の奨励や合宿形式での「VALUE-UP研修」などを開催しています。
また、従来あまり積極的ではなかった特許活動ですが、品質管理ツールなどを題材に特許活動を進めることにより、より広くIT技術への知見を広げる機会になるかと考えています。
「QAスキル向上WG」では、品質保証技術者に求められる望ましい行動規範を「QA10か条」にまとめ、毎年、この10か条に照らした技術者自身の行動についてのアンケート調査を実施しています。図2は2011年度のアンケート結果です。

「専門能力と知識」に関する行動の改善が必要と自己評価する技術者が半数を超えています。初めに述べたように品質保証技術者に必要な知識の領域は非常に拡がってきているため、専門領域に対する不安が現れているものと思われます。これに対応するために品質保証技術者に対してもITSSを活用したスキル評価を試行し、強化すべき専門領域について技術者自身と上長が共通認識を持つように努めてもらうとともに、品質評価技法など品質保証技術者にとって重要なスキルを強化するために、社内共通の教育カリキュラムに加えて品質保証部門で独自のカリキュラムを開発しています。
4.さいごに
技術者の育成とは「成長の場を提供する」ことだと思います。教科書を読んで得られる知識は、各自が自己啓発で努力すべきことです。ただしスキルは実践を通して磨かれていくものでそのためには経験を積むことが必要です。職場で組織として考慮すべきは、ケーススタディやワークショップ、業務の成果報告会など若い技術者が経験を共有する場をなるべく多く持つようにすることではないでしょうか。また、スキルだけでなく、時代とともに変化していく中にあって、検査マンとしての品質に対する執念、マインドを継承していくことを忘れないようにしたいと思います。