~ソフトウェア品質の向上とそこに関わるすべての方へ~ Software Quality Profession

品質保証技術者の育成


株式会社日立製作所 中田雅弘

「品質保証部門の人材育成」というテーマで寄稿を依頼されました。私自身は教育の専門家ではありませんが、私自身が考えていること、私の職場で取り組んでいることを紹介させていただきます。

1.検査マンから品質保証技術者へ

私は1982年に今の会社に入社し、当時のソフトウエア工場「検査部」に配属され、いわゆる受託開発ソフトウエアの「検査」をやっていました。設計部署が開発/テストしたソフトウエアを検査員が改めて独自に設定した検査項目に沿って検査し、その結果で出荷の合否判定をする、というのが仕事です。

その後、会社の方針により「検査部」から「品質保証部」と組織が改名され、仕事の重点も「検査」から上流での品質評価へ移っていくとともに評価対象もプロダクトそのものからプロセスへと変化しました。現在ではPMOとも密に連携し、プロジェクトのリスク分析の段階から関与するようになりましたし、対象もソフトウエアだけでなく、システム運用などを含む「ITサービス」まで拡がっており品質保証活動における「検査」のしめる比重は少なくなってきています。しかし我々の根底にあるものは「検査マンとして悪いものは絶対社外に出さない」という検査マインドであることは今も変わりはありません。

2.品質保証技術者に求められるもの

このように、品質保証技術者に必要な技術・スキルは時代とともに縦方向(下流から上流へ)、横方向(ソフトウエアからシステム、さらにサービスへ)と拡がってきました。

仕事の主流が検査であった時代は、テスト技術が主要なスキルであったものが、対象が上流に移ってくると例えば、構造そのものの良し悪しも評価できなければならない、ソフトウエアエンジニアリングに関する造詣も深くなければならないし、リスク分析手法についても理解してなければならないなど、大変な時代になったものです。

もっとも、それらの領域はそれだけでもひとつの本が書けるほど奥が深く、またその領域のエキスパートもいるわけで、それはそういったエキスパートの人たちにお願いすることにしてもいいわけです。それでは品質保証技術者に求められるもの、他に譲れないものは何かというと、
    ・品質評価技術
    ・問題発掘能力
ではないでしょうか。

テストにせよ、レビューにせよ、監査にせよ何らかの検証活動から得られた情報から現在の、また将来予測される問題を推定すること、これがすべての品質活動をドライブする起点になります。この品質評価技術は品質保証技術者にとって不可欠のものと言えます。

さらに重要なのがその評価結果から実際に有効な品質改善アクションを起こす実行力であり、またステークホルダに行動を起こさせるコミュニケーション能力かと思います。

どんなに的確に品質評価を行い問題を分析できても、それらが実際の改善に結びつかなければ企業に働く品質保証技術者としては何の意味もありません。品質保証技術者はステークホルダーの理解を得て、彼らに改善に向けての行動を起こしてもらうように働きかけなくてはいけません。

テクニカルスキル以外の
     ・行動力
     ・コミュニケーション力
     ・交渉力
といった、いわゆる ヒューマンスキルとかビジネススキルとかいった技術や能力が大切だと思います。

それでは、そのようなものはどのようにして獲得していけるのかというと、そういったスキルは教えて身に着くものではありません。たくさん仕事をして実践を通して多くの経験を積むこと、ステークホルダーと一緒になって汗をかくこと、失敗の苦さを知ってそれを乗り越えようと苦労した経験があること・・・が必要です。

3.人財育成への取り組み

本来、人は自ら成長しようとするものだと思いますから、育成とは即ち成長の機会や場を提供するということだと考えます。ここでは、私の職場で取り組んでいることをいくつか紹介したいと思います。

私の所属するカンパニーでは、カンパニーの組織としての品質保証本部があり、その下に金融とか公共とかビジネスドメイン対応の品質保証部があります。

2009年から本部内の各組織のコミュニケーションの活性化と共通的な課題への対応のために組織横断でのプロセス改革活動を始めました。その活動の大きな柱の一つに「QAスキル向上WG」があり、人財育成と組織活性化をテーマに活動を推進しています。(ここで「人財」と表記していますが、コンピタンスの源泉は人であり、人こそが財産、ということで私の職場では「人財」と表記するようにしています)

WGメンバーは、若手から管理職まで幅広い層から構成し、大きなテーマはトップダウンで与えるけれども具体的な課題の抽出や解決策については現場主義でボトムアップで検討するようにしています(このような活動それ自体も、育成の場となっていると言えます)。

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