「SQuBOKの利用法:参照スタイルから進化スタイルへの提案(その2)」
株式会社NTTデータMSE
ソリューションサービス事業部
コンサルティンググループ 堀 明広
【ソフトウェア品質の知見を整理し、蓄積し、共有し、そして議論する】
現在のSQuBOKの「参考文献」で紹介されているものは、「書籍」や、ISO・IEC・IEEE等の「規格」が中心です。
SQuBOKユーザー会では、これらSQuBOKからポイントされている「書籍」「規格」を更に充実化させると共に、更に加えて、ソフトウェア品質に関わる「記事」「論文」「トピック」といったものをも扱っていくことを考えています。
以下、詳細を記します。
●書籍
繰り返しになりますが、SQuBOKはその名は「ソフトウェア品質知識体系ガイド」です。
SQuBOKの本文中に記載されているのは要約であるため、その中身をより理解を深めるためには、「参考文献」をあたる必要があります。
SQuBOKの「参考文献」には、その記載量の制限から厳選されていますが、「参考文献」でポイントされていないものにも、良書はたくさんあります。また、SQuBOKが出版されて以降にもソフトウェア品質に関わる多数の書籍が出版されています。更に視野を広げ、ソフトウェア品質に直接的に関連しないものにも参考にすべき書籍は非常に多く、これらを紹介し合うことには、大きな意義があると思います。
書籍を紹介する際には、単に書籍名・著者・出版年月等のデータだけではなく、紹介者による感想や内容に関する意見も含めておくと、議論もしやすくなると思います。
●規格
SQuBOKの出版後にも、ISO・IEC・IEEE・JIS等の規格は新規策定・改訂・廃止がなされています。現状に合わせて状況を俯瞰・整理することを考えています。
また、ソフトウェア品質の観点で、その規格で記載されている内容の意図、複数の規格の関連・相違点などが議論できると良いと思います。
●記事
ここで言う「記事」とは、技術情報誌やビジネス誌や、新聞・ニュースの記事と、これらに関連するinternetサイト、webマガジン、blog等を指しています。
ソフトウェア品質に関する調査は、書籍や論文だけでなく、上述の「記事」を検索サイトで調べることも頻繁に行いますが、ここで言うまでもなく、各種メディアやinternet上での情報は爆発的に増加してきているため、目的の情報を得るのが難しくなってきています。
こういった情報を抽出・整理・共有すると、知見の発掘・整理に大いに役立つと考えています。
●論文
今回提案している中で、一番重視したいのは、この「論文」です。
論文と言うと、何か堅苦しい、敷居が高いイメージもあるためか、論文を読んだことが無いエンジニアが多いように思います。
まったく、もったいない話です。どうか食わず嫌いをしないで、一度、論文を読んでみることを、強くお勧めします。
例えば、日本科学技術連盟主催の「ソフトウェア品質シンポジウム(通称:SQiPシンポジウム)、ASTER主催の「ソフトウェアテストシンポジウム(通称:JaSST)」では、実務者が執筆した事例報告が数多く報告されています。
これら論文では、その組織やプロジェクトで抱えている問題・課題を整理し、それを解決するための方法を考察してそれを実施し、その結果がどうだったのか検証するまで、分かりやすく整理されており、書籍等だけは得られにくい実践事例を知ることができます。
為すべきことは分かっているが、具体的にはどう手をつけていけば良いのか分からないといったケースや、取り組みはしているが、壁に当たって行き詰まり・手詰まりし、悩んでいる方も多いかもしれません。こういった時には、論文でヒントになる事柄が見つかることが多いものです。
また、論文を読むことで、各組織ではどんな取り組みがなされているか、トレンドも把握でき、視野を広げることにも役立ちます。
しかし、どこで、どんな論文が発表されているか、その入手方法が分からない方も多いことでしょう。
これらをSQuBOKの樹形図を軸にして整理し、その情報を共有したいと考えています。
●トピック
私自身の感触ですが、ソフトウェア品質に関わるエンジニアは、組織の垣根を越えた交流が盛んで、横の繋がりが強いように思います。
例えば、SQiPコミュニティやソフトウェアテスト技術者交流会等のコミュニティを母体に、各地域で自主的に、活発に勉強会等が催されています。
私自身、このような勉強会や研究会活動をこれまで一生懸命にやってきましたが、その過程で多くの方々に育てていただいたと思っています。
こういった活動の存在そのものを紹介し合うこと、また、そこでディスカッションで交わされた意見や得られた知見、整理された事項等を持ち寄って蓄積・共有することが出来れば、互いに大きなメリットになると思っています。
また、これらの情報共有をする過程で、互いに持ち寄った情報に対して意見・補足情報等を加えるようにして、いったら、別の議論が生まれ、それが新たな知見の創出に繋がるものと思っています。
【準備はほぼ整いました】
「書籍」「規格」「記事」「論文」「トピック」と、SQuBOKユーザー会の新活動で扱う事項についてご説明してきました。
この活動を行うには、internet上で情報を蓄え、共有するための器(インフラ)が必要ですが、クラウドサービスを活用するよう、現在 準備を進めています。
この原稿を執筆しているのは8月1日ですが、この時点でinternet上のインフラ準備はほぼ整っており、まもなくSQiPコミュニティに案内を出せるところまで来ています。
次回のこの記事では、本取り組みをどのように実践しているか、報告出来ると思います。
なお、SQuBOKユーザー会にはどなたでもご参加いただけます。
SQuBOKユーザー会の詳細は以下に情報がありますので、興味をお持ちの方は是非ご参加ください。
お待ちしております。(SQuBOKユーザー会のwebサイトも、近々に公開する予定です。)
http://www.juse.or.jp/software/142/