「SQuBOKの利用法:参照スタイルから進化スタイルへの提案(その2)」
株式会社NTTデータMSE
ソリューションサービス事業部
コンサルティンググループ 堀 明広
「SQuBOK」とは「Guide to the Software Quality Body of Knowledge」の略で、正式名称は「ソフトウェア品質知識体系ガイド」です。
対して「SQuBOKユーザー会」は、以下を目的に、2009年に設立されました。
・ 先人が切り開き、培ってきた品質技術を伝承し、それらを有効利用して、更には発展させるため、
SQuBOK活用の事例を共有する。また、SQuBOKをより密に活用する方策・方法を模索し、共有する。
・ ソフトウェア開発に関係する者にとって、SQuBOKがより価値ある知識体系に進化し続けることに、
SQuBOKのユーザー自身も参画し、これを実現する。
従来の「SQuBOKユーザー会」の活動のメインは、メーリングリストを通じての議論・情報交換を主としていました。
前回の記事では、ソフトウェア品質に関する知見は非常に広くて深淵であることを、私の実体験を交えて紹介しました。また、SQuBOKをより活用してソフトウェア品質向上活動に繋げる一つの手段として、「SQuBOKユーザー会」で今後取り組んでいきたいことの概要に触れました。今回は、それらをもう少し詳しく記します。
【SQuBOKユーザー会 新活動の概要】
SQuBOKには、今まで先人が切り開いてきた知見が体系的にまとめられています。
SQuBOKユーザー会を発足させた時には、これらの知見を蓄えたSQuBOKの活用の仕方を共有する、ということを目指していました。
つまり、今までのSQuBOKユーザー会は、色々な知見が書かれているSQuBOKをどう利用するか、という観点で捉えていました。
ソフトウェア品質に関する知見、事例は常に進化しています。
これらを、SQuBOKユーザー会で積極的に扱っていきたいと考えています。
・ 新たに出された知見を整理し、体系付けるのに、SQuBOKを軸として利用する。
・ 勉強会等で出された意見等を、その場限りでなく、一個の体系に記録し、蓄えていく。
・ それらを使って、更に議論を深めていき、新たな知見を産み出していく。
提案したいことは、SQuBOKで整理されている樹形図を利用して関連事項を集約・充実させ、過程の中で議論をしていこうよ、というものです。
これらを行うには、internet上で何らかのインフラが必要と考えています。
どんなインフラか、その運用方法はどうか。 これらをSQuBOKユーザー会で議論していきたいと思っています。
【SQuBOKの樹形図の構成、参考文献】
SQuBOKでは「樹形図」を軸にして、ソフトウェア品質に関する知見を整理しています。
この樹形図は、SQuBOKでは目次として機能しています。
例えば、「第1章 ソフトウェア品質の基本概念」は、以下のように構成されています。
第1章 ソフトウェア品質の基本概念
1.1 KA:品質の概念
1.1.1 S-KA:品質の定義(品質の考え方の変遷)
1.1.1.1 T:品質の定義(Gerald M. Weinberg)
1.1.1.2 T:品質の定義(James Martin)
1.1.1.3 T:品質の定義(Joseph M. Juran)
1.1.1.4 T:品質の定義(Philip B. Crosby)
1.1.1.5 T:品質の定義(Roger S. Pressman)
1.1.1.6 T:品質の定義(Robert L. Glass)
1.1.1.7 T:品質の定義
1.1.1.8 T:品質の定義(IEEE Std 610)
1.1.1.9 T:品質の定義(ISO 9000)
1.1.1.10 T:品質の定義(ISO/IEC 25000)
このように、SQuBOKの樹形図は、最大4階層で構成されています。上記のそれぞれには「本文」「関連トピックス/知識領域」「参考文献」「関連文献」が記載されていて、ソフトウェア品質に関する知見が要約されています。
SQuBOKでソフトウェア品質に関する調べ物をする際には、樹形図で関連する箇所を探し、そこの「本文」に書かれている内容を読んで概要を理解し、更に詳細を知りたい時には「参考文献」に記載されている文献にあたる、といったことがされていると思います。