『部下の不調を見逃すな!マネージャーのためのメンタルヘルスケア』
株式会社プラネット・コンサルティング
代表取締役 根岸 勢津子
【部下の不調に気づくポイント】
体の病気も同じですが、メンタル不調も、早期発見・早期治療が何よりも大切です。あなたの部下に下記のような人はいませんか?
1. け・・・欠勤
2. ち・・・遅刻
3. な・・・泣きごとめいたことを言う
4. の・・・能率が下がった
5. み・・・ミスが増えた、身だしなみが乱れた
6. や・・・辞めたいという
1~6の頭文字をとって、『けちなのみや』と覚えましょう。あくまでも、『以前と比べて』という条件付きです。あんなに毎朝きちんと出勤してきた人が・・・とか、あんなに明るかった人が・・・という変化に気づいて下さい。ただし、変化というのはAからBに変わることを言うのであって、Aを知らなければBになったことを変化と捉えられません。何が言いたいかというと、普段の部下の様子に気を配っていなければ、些細な変化に気づくことはできないということです。
これらのポイントのうち、2、3つ程度現れたら、迷わず声をかけましょう。ここであなたがためらっていては、手遅れになる可能性があります。
【上手な声のかけ方】
いきなり、『君、なんかウツっぽいから病院行けよ!』と言われたら、誰だって気を悪くするでしょう。ここは下記のような声のかけ方がいいと思います。
『ねえ○○君、ちょっと顔色悪いみたいだけど、ちゃんと睡眠取れてる?』
『ねえ△△君、ここ最近元気ないみたいだけど、ちゃんと食事摂れてる?』
このように、体調の心配から入るのがいいでしょう。こういうふうに声を掛けられて気を悪くする人は、めったにいません。また、睡眠障害と食欲不振は、うつの始まりの二大兆候と言われておりますから、ちょっとした問診にもなるのです。
しかし、相手は『いえ、大丈夫です。』と答えることが多いものです。ここで、それを鵜呑みにしてはいけません。あなたはいったん引きさがりますが、その後決して目を離してはいけません。かれの状態が、そのままか、悪くなるか、回復するか、少なくとも1週間~10日間の観察が必要です。そして、1週間経っても様子が変わらない、あるいは悪くなっていくようでしたら、次の行動に出ます。
【専門家への受診を勧める】
次にあなたの取るべき行動は、部下を専門家に受診させることですが、そんな時、あなたの会社の人事部門は助けてくれますか?早速会社に確かめておきましょう。万が一、部下にそういう事象がおこった場合、会社が用意している医療体制があるのか、あれば、どのように利用するのか、等々。
■会社に産業医などの体制があり、相談に乗ってくれる場合・・・人事部を通して部下を産業医に受診させる。
■会社に体制が無い場合・・・部下に自分で医療機関に行くように勧める。
いずれの場合にも、話し方にはテクニックが必要です。そして少しの勇気も。ここは『アイ・コミュニケーション』を利用します。これは、『私は~』から始まる話し方で、自分がどう感じているか、に重きを置いて考えを伝えるやり方です。
例えば、部屋が散らかっている子供に対して・・・『さっさと片付けなさいよ!』というのが、『ユー・コミュニケーション』です。あなたは片付けるべきだ、と『あなた』が主語になっていますね。では、これはどうでしょう。『あなたの部屋が散らかってると、お母さん悲しくなっちゃうわ。片付けてくれたら嬉しいんだけどな。』これは、自分の気持ちを伝えている『アイ・コミュニケーション』です。この手法を、部下にも応用してみましょう。
『ねえ、○○君。最近の君を見てると、どうしても心配なんだよ。
一度専門家のところに行ってくれれば僕も安心できるんだけどね。』
こんな調子です。ひとつも『病院に行け』とは行ってませんね。これを、あなたなりにアレンジして、実際に部下の顔を思い浮かべて、ロールプレイングをしてみて下さい。いざという時、あわてないで済みます。