『部下の不調を見逃すな!マネージャーのためのメンタルヘルスケア』
株式会社プラネット・コンサルティング
代表取締役 根岸 勢津子
部下を持つ皆さんの、一番大切な仕事の目的とは何でしょうか。多分多くの方は、チームの生産性を向上して、よい成績・成果を上げること、とお答えになるでしょう。その通りですね。会社は小さなチームの集合体によるピラミッドあるいは文ちん型を形成し、成績・成果を集約し、企業としての利潤をあげて行くものだからです。では、チームの生産性はどうしたら向上するのでしょうか。それはリーダーシップとフォロワーシップが見事にかみ合った時、マネジメント機能が発揮され、そのチーム最大のパフォーマンスを見せることができると言われています。しかし、それもすべて、メンバー全員が健康であるという前提において語られることです。今回は、自分のチームメンバーの健康管理にスポットを当ててお話しましょう。
【メンバーの不調がもたらすリスク】
皆さんの部下がメンタル不調に陥った場合、チーム全体に与える影響にはどのようなものがあるでしょう。まず、他のメンバーが不調者に気を使います。メンタル不調というのは勤怠に乱れが出たり(来たり来なかったり、または遅刻など)仕事の能率が下がったりしますので、本当に周りは困ってしまいます。病状が進んだ状態になれば、職場の士気に影響が出るでしょう。休職となれば、その人の代わりに入れるメンバーの確保、教育などにお金と時間がかかり、原価を増やす原因となります。
次に、顧客に与える影響です。仕事が滞れば納期も遅れ、お客様と約束した日までに、約束したクオリティの製品を納入することが難しくなります。また、メンタル不調者は仕事のミスも増えることが多いので、トラブルの原因にもなりかねません。
【部下のメンタルヘルスに気を配るのはリーダーの義務】
なぜリーダーは、部下の健康にまで気を配らなくてはならないのでしょうか。ひとつには、冒頭に書いたとおり生産性を向上してチームの成績・成果を上げるのがリーダーのミッションだからです。もうひとつは、企業の安全配慮義務という側面があります。これは労働契約法第5条に明記されており、『企業は労働者が安心して安全に仕事に従事できるよう注意を払わなくてはならない』という意味のことが書かれています。では、実際にその義務を遂行するのは誰でしょうか。そうです、リーダーである皆さんの義務なのです。製造業・建設業などにおいては、現場での安全確保がそれにあたりますが、パソコンの前で開発業務などに当たる方たちの安全とは何か、それを考慮して日々のマネジメントに活かすのが、皆さんに課せられた法的な義務なのです。今やメンタルヘルスケアは、企業における安全配慮義務の最重要課題と言えましょう。
【企業を取り巻くリスク】
安全配慮義務を怠ると、企業はどのようなリスクを被るのでしょうか。ここ数年、企業と労働者の間でのトラブルや訴訟が激増しています。未払い残業代、名ばかり管理職の問題と並んで、メンタル不調による解雇や労災認定の問題がクローズアップされています。東芝のうつ解雇無効訴訟や、電通の若手社員の過労自殺訴訟などは、いずれも企業が不利な立場に立たされ、多額の賠償金を支払う結果となっています。労働基準監督署の指導内容も年々厳しくなっており、企業は対応を迫られています。
リーダーの皆さんは、残業を命令する立場であるならば(管理監督者)、労災事故の際に責任が発生する可能性もありますので、どうか仕事の一環として部下の健康管理に取り組んで頂きたいと思います。