2011年度(第27年度)ソフトウェア品質管理研究会の報告
富士ゼロックス株式会社
秋山 浩一
4回目は、石橋氏による意識改革の話です。仕事を進めるのは「人」であり、たとえどんなに素晴らしい標準プロセスがあったとしても個人のやる気無しではその仕組みは機能しないこと。そして、最新の動機づけ理論をもとに意識改革の重要性と、意識改革を行うヒントをいただきました。
5回目は、荒木先生による形式手法の講義です。形式手法というと難しい述語論理や時相論理の話で自分には関係が無いと思っていた研究生も多かったようですが、具体的にどのようなところに役立つのか、また、形式手法と言っても色々な種類が存在し、取り組みやすいものもあることを教えていただきました。
6回目は、青木氏、三井氏、川口氏によるUX(ユーザエクスペリエンス)についての紹介です。この分野はデザインや使用性を取り扱うジャンルとして近年注目を浴びています。操作性や性能はお客様との接点ですから、ソフトウェア品質を考えるうえで非常に重要なポイントです。
7回目は、林氏によるソフトウェアプロダクトラインの話題です。派生開発とソフトウェアプロダクトラインの違いから始まり、考え方について丁寧にご教授していただきました。また、実際にソフトウェアプロダクトラインに取り組み始めた方から「何をコアとして管理していったらよいのか」といった根本的な、しかし、本質的に重要な質問がでました。
このように、一年に渡りソフトウェア品質の様々な側面の知識を、第一線の専門家から直接受けることで研究生は様々な気づきを得ることができます。SQiP研究会の柱の一つです。
3.研究会活動
例会の午後は、各コースに分かれての活動となります。コースは大きく分けて研究系の分科会と、学習系の演習コースがあります。研究系は、新技術の発明や実問題への既存技術の応用適用を目指し、学習系は、既存技術の整理と習得を目標としています。2011年度は次に示す、6つの研究系分科会と3つの学習系演習コースを設けました。2010年度と比較するとテスト演習コースが第5分科会と合流し、あらたに「形式手法と仕様記述」をテーマとした演習コースができたことです。
各分科会の主査・副主査および作成した論文タイトルを紹介します。
第1分科会 ソフトウェアプロセス評価・改善
副主査 : 三浦 邦彦(矢崎総業(株))論文1: リスク管理プロセスに注目したプロセスの定量的効果予測の提案
論文2: 「KPT」と「なぜなぜ分析」を応用した KWS 振り返りの研究
第2分科会 プロジェクトマネジメント
主査 : 早川 勲((株)山武)副主査 : 板倉 稔((株)イネーブルツリー)
論文: 『場』の発見
第3分科会 ソフトウェアレビュー
主査 : 細川 宣啓(日本アイ・ビー・エム(株))副主査 : 永田 敦(ソニー(株))、藤原 雅明(東芝ソリューション(株))
アドバイザ:森崎 修司(奈良先端科学技術大学院大学)
論文1: レビューオリエンテーションキットを用いた育成によるレビュー文化の醸成
論文2: 検出難易度の高い欠陥を検出するレビュー方法の提案
第4分科会 ソフトウェア・ユーザビリティ
主査 : 金山 豊浩(ミツエーリンクス(株))副主査 : 福山 朋子((株)インテック)、三井 英樹((株)ビジネス・アーキテクツ)
論文: ユーザエクスペリエンス(UX)手法を用いた企画品質評価の提案
第5分科会 ソフトウェアテスト
主査 : 奥村 有紀子((有)デバッグ工学研究所)副主査 : 秋山 浩一(富士ゼロックス(株)) 、堀田 文明((有)デバッグ工学研究所)
論文1: バグの流出防止を考える
論文2: 第三者評価におけるシナリオテストプロセスの提案
第6分科会 派生開発
主査 : 清水 吉男((株)システムクリエイツ)副主査 : 飯泉 紀子((株)日立ハイテクノロジーズ)
論文1: 変更依頼の対応箇所を検討する前に他システムへの影響を検知する方法
論文2: 後任者目線を取り入れた設計背景の形式知化による派生開発の品質向上策
分科会活動の風景
4.SQiPシンポジウム、5WCSQとの連携
SQiPシンポジウム2011にSQiP研究会からはSIGとして参加しました。また、2010年度に本研究会第3分科会で研究された「間接的メトリクスを用いて欠陥予測を行うレビュー方法の提案」が発表され、SQiP Future Awardを受賞しました。
それから、2011/10/31~11/4に開催された第5回世界ソフトウェア品質会議(5WCSQ:5th World Congress for Software Quality)において、2008年度に第5分科会で研究された「WEB システムにおける画面遷移図表表記法の提案と効果的なテストケースの作成」が発表されました。
このように、SQiP研究会は一年間の活動が終わった後も継続して仲間として研究をし続けてその成果を発表することでソフトウェア品質技術力の向上に貢献しています。
また、SQiP研究会の活動を広く理解していただくため、2011年度は、「SQiPミニシンポジウム」と題しSQiP研究会を疑似体験していただく会を2回開催しました。いずれも満員で「ためになった」「楽しかった」との声をいただいています。
5.おわりに
2011年度も、2月24日の発表で終わりです。1年に渡り参加した研究生から特別講演に対して「非常に参考になった」「自社でも取り組んでみたい」といった声をいただいています。また、午後の各コースに対しても「主査・副主査からの指摘が勉強になる」「論文をまとめるなかでの気づきが大きい」といった感想を聞いています。
2012年度も同様の体制で活動していきますので是非ご参加を検討いただければと思います[3]。
最後になりましたが、研究員(参加者)、各分科会・演習コースの主査、副主査、アドバイザ、特別講義の講師、各分科会コース内の講師、SQiP シンポジウム委員会、SQiP ステアリング委員会、ならびに、SQiP 研究会の事務局各位の熱心かつ的確なご参画・運営に感謝します。
参考文献
[1] クオリティワン Vol.15 2011年8月号、Vol.16 2011年11月号
http://juse-sqip.jp/vol15/image/QualityOne201108.pdf
http://juse-sqip.jp/vol16/image/QualityOne201111.pdf
[2] 2011年度ソフトウェア品質管理研究会特別講義
http://www.juse.or.jp/software/323/
[3] SQiP研究会
http://www.juse.or.jp/software/28/