~ソフトウェア品質の向上とそこに関わるすべての方へ~ Software Quality Profession

人材育成…よりも、自己育成

日本電気㈱
ITソフトウェア事業本部
統括マネージャー 誉田 直美

2.自分の考えを文章にまとめる

NECには、その昔、SWQCと呼ぶソフトウェア開発の小集団活動がありました。SWQCでは成果の論文発表が義務付けられていて、それが形骸化の一因となり、いったん活動を休止した経緯があります(現在は、コミュニティという形式で残っています)。それでも、私はSWQC活動で学んだことは多かったと思います。

その理由は、論文を書いて発表することが義務付けられていたので、仕事の区切りがつくたびに、自然と自分の考えを文章にまとめ、人前で発表する経験ができたからです。文章にして自分の考えをまとめると、取り組んでいたときには正しいと思っていても、論理的な矛盾や不足があることに気がつくことができます。文献調査の必要性を実感したのもこのころです。自分一人で考える工夫には限度があって、先人の経験を取り込んでそれに自分の工夫を重ねる方がより良い成果が得られるのだと実感しました。また、人前で発表することによって、論理的に説明するだけでなく、わかってもらえるように話すことの難しさも学びました。

私が論文を書くことを勧めるのは、自分のこのような経験に基づきます。でも、実際に書いている人は少ないですね。時間がないのはわかりますが、時間の有無は関係ありません。要はやる気です。ただし、文章にまとめることが未経験だと、何をどうしたらいいのか、最初のきっかけがつかみにくいかもしれません。そういうときは、論文募集している団体の論文執筆サポートを利用しましょう。ちなみにSQiPソフトウェア品質シンポジウムにも論文執筆サポートがあります。ぜひ利用してみてください。

実際に書いてみれば、書くことの難しさと重要性に気がつくと思います。ちなみにパワーポイントでは同じ効果は得られません。きれいな図でごまかされて、できたような気がするだけです。口数の多い人は、プレゼンでごまかしてしまうかもしれません。プレゼンの能力と、文章で論理的に記述する能力は異なります。自分で説明してまわれる範囲は限られるのですから、読んでわかるように書くことができなければ、広く自分の意見を理解してもらえません。読んで理解できるように文章を書くことが出来ない人は、技術者とは言えないと私は思っています。

3.社外に出る

SQiPにソフトウェア品質管理研究会というのがあります。入社したてのころ、私はこのSQiP研究会へ1年参加させてもらいました。SQiP研究会では、1年に7~8回の終日かけた研究会が開催され、ソフトウェア品質に関連するテーマについてグループに分かれて研究し、最後にはグループで論文にまとめて発表します。さまざまな会社の方が参加するだけでなく、その領域の有識者がグループを指導してくれます。私にとって、社外に出るという経験はこのSQiP研究会が初めてでした。たしか、メトリクスをテーマに選んだ記憶があります。そのときの指導役は忘れもしない、保田先生(日立製作所(当時)、つくば国際大学(現))と堀内さん(日立製作所(当時))でした。SQiP研究会には合宿もあるのですが、当時は箱根の小涌園が合宿会場でした。その小涌園での議論の光景は、今でも目に焼きついています。保田先生と堀内さんには、今でもお付き合いしていただいています。1年かけた研究はとても良い経験になりました。なにより、社外の方と話ができたことが良かったと思います。自分の困っていることや考えていることが他社の人に理解してもらえるのか、他社も同じようなことを悩んだり検討したりしているのか、自社にない新しい試みをしている会社があるのか…等々、多くの刺激を受けました。なにより、社外の人に社内の用語は通じないというあたりまえのことを、実感したことが忘れられません。自分の仕事さえうまく説明できなかったときのことは、今も恥ずかしさとともに思い出します。相手にわかるように説明できる能力というのは、実はとても高度な能力なのだと思います。社外での交流は、その練習の場にもなります。当時は、ソフトウェア関係のシンポジウムもほとんどなく、他社の方と交流できるような機会はとても少なかったので、私にとってSQiP研究会は貴重な経験でした。手前みそになりますが、自分自身の体験から、SQiP研究会はとてもお勧めの教育コースの一つです。

業務が忙しくて、なかなか社外に出る機会は少ないかもしれませんが、会社を休んでも社外の集まりに参加し、社外との交流を持つことは、間違いなく自分を磨く貴重な場になります。ソフトウェア関係のシンポジウムなどは、何年か続けて通うといいと思います。各専門領域の主要なプレーヤーがわかるようになるはずです。主要な人物はそれほど多くないことがわかると思います。また、そういう集まりに参加する人達とも顔見知りになると思います。そういう人たちとの関係が重要なのです。困った時に助けてくれる良き友になると思います。私自身は、社外のお友達にどれだけ助けられたかわかりません。会社と会社はどこでつながっているかわからないし、お互いお客様であり同時にお客でもあるわけで、ビジネスの場面で顔を合わせることもしばしばあります。そんなとき、事前に必要な情報を入手できるかどうかは、実質的にはともかく、精神的には大違いです。特にトラブル対応のときは背景も含めた情報量がものを言います。私は、社外のネットワークが業務で直接役立つようになるまでに、20年くらいかかりました。役立てようと思って顔見知りになったわけではないですが、最近ひしひしと社外ネットワークの重要性を感じています。20年我慢(!)してお友達で良かったと(おそらくお互いに)思うこのごろです。

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