困難に立ち向かっているけれど幸せ?
~「ポジティブ心理学」の幸せ観と働き方~
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一般社団法人ポジティブイノベーションセンター
代表理事 渡辺 誠
こんなことから、幸せの研究であるポジティブ心理学が始まった。
そこにはイリノイ大学のエド・ディエナー教授も加わった。ディエナー教授は主観的満足度を幸せとしている。自分が自分自身の判断で満足できると思えることが幸せなのだ。人はどうしたら自分の人生に満足できるかを20年以上も探求してきた。科学的な実証をして多くの研究成果を出してきた。幸せ博士と言われている人だ。
写真1.エド・ディエナー教授と筆者
エド・ディエナー教授はこんな話をしている。
「シンデレラの話を知っていますか?継母にいじめられ、貧しい服しか着られなかったシンデレラが、魔法使いのおかげで、お城のパーティに参加することが出来た。王子と巡り合い、プリンセスになった。さて、その後のシンデレラはどう生きるのでしょう。ストーリーを作ってみてください。その後、シンデレラは、一生幸せで生きていけるでしょうか?」
ディエナー教授はいう。「我々が生きていくうえでバラ色の生活だけが満足感をもたらすのではない。基本的なニーズが満たされるまではお金や富は大切だが、ある程度のニーズが満たされるとお金や富では人の満足度を増やすことができない。頭のよい人が幸せをつかむように思えるが、IQが高いことが幸せと言い切れるほど関係性が無い。教育程度も同様だ。大学院卒が低い学歴の人に比べて幸せかというと調べてみると大きな違いが見つからない。年を取った人から見ると若さはうらやましいが、若い人と年をとった人の幸せ度を統計的に比べると、むしろ、年を取った人のほうが幸せ度は高い。」
どうやら、バラ色でなければ幸せでないという考えを変えてみる必要がありそうだ。幸せ博士はいう。「幸せは、アップダウンのある毎日の生活にある。幸せは結果ではなく、プロセスにある。業務課題に取り組み、一所懸命考え、解決しようとしているときのときのプロセスの中に幸せがある。難しい課題を何とか克服しようと夢中でやっている。その時点では無我夢中かもしれないが、そんなプロセスにも充実感を感じたことがないだろうか。人生はつづく。何かを達成した止まった状態でバラ色になっているときだけではなく、ダイナミックに動いている日々の活動の中に幸せや満足感や充実感があるのだ。」
そんなことを聞いて私は考えた。「え?? バラ色じゃなくてもいいんだ。私だって、アップダウンしているよ。難しい課題を与えられて、ヒーヒー言いながら頑張っているときもある。好きな仕事を夢中ですることもある。じゃあ、私にも幸せがあるかもしれない。そういえば、活動中に充実感や、やりがいを感じていることもある。確かに自分では満足しているな…。これって、幸せなの?」
心地よいだけでなく、充実感がある、達成感がある、和やかな気分になれるなど、ポジティブな感情が増えた時に満足度が向上する。それを幸せと言ってもいいだろう。