困難に立ち向かっているけれど幸せ?
~「ポジティブ心理学」の幸せ観と働き方~ (1/4)
一般社団法人ポジティブイノベーションセンター
代表理事 渡辺 誠
我々の幸せってなんだろう?
我々働く人の幸せってなんだろう?
楽に働けて、いい給料をもらって、与えられた仕事はさっさと済ませて、自分のプライベートの時間を楽しむ。
プライベートでは、素敵な奥さんや旦那さんと、景色のよい明るく大きな家に住み、ゆったりと時間を過ごす。二人でいい車に乗って温泉に出かけ、ゆったりとした時間の流れを味わう。スポーツをして、汗をながし、心地よい疲れに身をまかす。お金はある。時には二人一緒にビジネスクラスで海外旅行に出かけ、高級ホテルに泊まり、大きな自然の風景やその土地の歴史的な建物に囲まれて、おいしいものをたべ、見たこともない文化や芸術を楽しむ。
優雅な時間だ。何も困らずに、何も悩まずに生活していく。そして、何も努力しなくても、何も苦労しなくてもいい。苦しいことなんかどこにもない。なんとなく憧れているそんな生活。幸せってこれ以外にないのだろうか?このような生活をずーっとしていられたら本当に幸せなのだろうか?
人の生活は仕事が順調な時もあり、難度の高い仕事に悩むときもある。人間関係でもお互いが分かりあえる時もあり、うまくかみ合わないで悩むときもある。生活のもろもろの事がうまく行くときもあり、うまくいかないときもある。これが我々の毎日の生活や仕事ではないだろうか?この毎日をイキイキ生きていくためにはどんなことを考えて、行動したら良いのだろうか?
そんな、人の幸せを研究する学問が生まれている。「ポジティブ心理学」と言われている心理学だ。ここには多くの学者が集まり、普通の人がより良い幸せな生活をするための研究や、人の能力を最大限に発揮するための科学的な研究がおこなわれている。
ここでは、その研究の一端を紹介し、我々が幸せになるために何をしたらよいのかを考えてみよう。
「ポジティブ心理学」はマーティン・セリグマンが、1998年元旦に心理学の新しい方向性を示したことから始まる。アメリカ心理学会の会長に就任した時の事である。セリグマンは、「私の心理学としての仕事はまだ半分しか終わっていない。(心の病気で)マイナスになった人をゼロに戻すだけでは十分でない。我々は人がイキイキと生きるために心理学で何が出来るかを問いかけなければならない。どうしたら(人を)ゼロからプラス5にできるか?人が満たされて、夢中になれて、意味がある、充実した生活をもたらすためにはどんな活動がよいか?そんなことを問いかけていきたい。」